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1988年、WHOはポリオ(小児麻痺)を西暦2000年までに地球上から根絶する構想を採択しました。2000年までの根絶は出来ませんでしたが、現在2005年の世界根絶宣言を目指している。2002年のポリオの報告数は1925件と、1988年の35,000件以上のポリオ発生報告に比べて大幅に減少、流行地域も125カ国から4カ国 に減りポリオは世界の大半の地域から消えています(図を参照)。1994年に南北アメリカ大陸のポリオフリーが宣言され、そして2000年10月29日に西太平洋地域のポリオフリーが京都で宣言 されました。また2002年にはヨーロッパ地域でも1998年にトルコで最後の患者発生で、2002年6月21日にポリオフリーの宣言がされました。

世界中で発生していたポリオの流行は、現在、主に南アジア、西アフリカ、中央アフリカの3つの地域に集中しています(地図1参照−WHO)。ポリオ発生状況

ACIHは、この世界ポリオ根絶戦略に「JICAにおける研修事業」や「ポリオ流行国への派遣専門家の訓練」 青年海外協力隊員(JOCV)の派遣前補完研修などを通して、積極的に協力しています。そこで、ポリオ根絶について少し情報をお知らせします。

ポリオとは

「小児麻痺」と呼ばれ、日本でも約30年前までは流行を繰り返していましたが、予防接種の効果で国内での流行は報告されていません。

ポリオはポリオウイルスが脚や腕、胸、腹の筋肉を麻痺させる病気です。ポリオウイルスは口から入り、腸の細胞で増えます。便に混じって身体から出るものもありますが、一部は血液の流れに乗って脊髄にたどり着き、運動神経を壊します。実際に麻痺を起こすのは、感染した100〜200人に1人で、残りは軽いカゼのような症状で治まり、終生免疫を獲得します。発症する場合は、カゼ様の症状を呈し、発熱があり、その後、頭痛、嘔吐が現れ、麻痺が出現します。いったん発症すると、呼吸筋の麻痺で呼吸ができずに死に至ることもあり、命を取り留めたとしても、一部の人に終生、手足の麻痺が残ります。

ポリオ根絶戦略

  1. 高い定期予防接種率の維持(80%以上)  EPI(1) Programme
  2. ポリオワクチン全国一斉投与 Mass Immunizationの実施 (NID(2) : National Immunization Day)
  3. サーベイランス(3) (Surveillance)の強化
  4. High Risk AFP(4) の同定と調査  Actionの決定
  5. 実験室(ウイルス)診断(5)(Laboratory Network)の整備

カンボジアの最後のポリオ患者 (櫻井医師より)ポリオは、人間以外の動物にはかからず、安価で投与しやすい優れたワクチンがあるなど、根絶が可能な疾患の条件を満たしています。そのため、WHOは天然痘の次の根絶対象にポリオを選びました。

ポリオ根絶戦略の1つは、病気にかかりやすい5歳未満の子ども全てを対象にした短期間でのワクチン一斉投与(NID)です。通常3日間のキャンペーンを、約1ヶ月の間隔をおいて2回行い、これを数年続けます。これにより、ポリオウイルスがヒトに入り込むすき間がなくなり、ウイルスは一気に減少します。実施前には綿密な計画が必要で、物資や要員の配置、ワクチンの確保と適正分配、および一般大衆への啓蒙活動などが十分に必要です。また、人口密度の高いバングラデシュなどではNIDだけではポリオ根絶が難しく、モッピングアップ(発見された流行地域の訪問戸別接種と患者発見作業)が重要です。モップアップには十分なAFPサーベイランスが前提になります。

また、ポリオウイルスの伝播がなくなったことを証明する必要があります。そのことを本当に証明するためには、臨床的な症状(残留麻痺など)で判断するのではなく、ワクチンに由来しない野生型のウイルスを排泄している子ども(患者)がいないことを確認しなければいけません。何かが「ない」ということを証明するのは、「ある」ということを証明するよりはるかに難しく、ポリオと疑われる麻痺患者(AFP)を漏れなく探し出し、その患者の便のウイルス検査が確実に行われること(サーベイランス)が重要になります。

感染症根絶の条件
  天然痘(Smallpox) ポリオ(Polio)
ヒト以外の動物宿主がいない なし なし
潜伏期間が短い 5-7日 5-7日
特徴的な症状(顕性感染) 痘瘡疹 さまざまな弛緩性四肢麻痺
Mortalityが高い 10-40% 5-10%
Carrier stateがない なし なし
伝播力が遅い 比較的遅い 天然痘より早い
良いワクチンがある 長い免疫力
安価
保存性:熱に強い
投与方法:二叉針で皮下
長い免疫力
安価
保存性:熱に弱い
投与方法:経口3回
トレーニングが必要ない
実験室診断が容易である 水泡から1週間以内で分離 便から最短1ヶ月かけて分離

ワクチン投与(1) EPI: 予防接種拡大計画 (Expanded Programme on Immunization)
1974年に始まったWHO/UNICEFの共同事業で、世界中全ての子どもに、ジフテリア・百日咳・破傷風・麻疹・ポリオ・結核を予防するための予防接種を実施すること。90年代には約80%にまで上昇、子どもたちがかかりやすい病気全体が激減しました。
(2) NID: ワクチン全国一斉投与 (National Immunization Day)
5歳未満の子ども(注:中国の場合)全てを対象、過去のワクチン歴にかかわらず、1ヶ月間隔で2回投与。
(3) サーベイランス (Surveillance)
本来の意味は「監視」「見張り」という意味です。1968年のWHOの総会において、サーベイランスは「有効な対策を樹立するために感染の分布と蔓延およびそれに関係する要因を十分な正確さと完全さをもって継続的に正確さと完全さをもって継続的に精査、監視すること」と定義しています。@情報収集(Collection)、A解析(Analysis)、B結果の還元(Feedback)からなるサーベイランスは根絶活動で重要な手法です。ポリオ根絶については、サーベイランスの指標として「15歳未満のAFP」が用いられています。
(4) AFP: 急性弛緩性麻痺 (Acute Flaccid Paralysis)
ポリオ根絶計画の中で、ポリオ患者を臨床的に見逃さないため、15才未満の子どもに発生したあらゆる急性弛緩性麻痺を報告させるシステムで用いられる疾患群の総称。ポリオのほか、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎や注射麻痺などを含むAFPの報告が、ポリオ流行国に課せられています。AFPサーベイランスはポリオ発生状況を正確に把握することを目的としています。また、すべてのAFP患者から便検体を採取し、もれなく実験室診断に供するための役割があり、これによりポリオ患者の見逃しを最小限にしています。
(5) 実験室診断
患者が発見されたら、マヒ発生時から2週間以内に、2回、2日間隔で便を取り、これによりポリオウイルス分離を行います。ポリオウイルスには生ワクチンのセービン株とヒト間に伝播を続けている野生株の2つがあります。この野生株が分離された時初めて、ポリオ患者となります。

参照: World Health Organization (WHO)


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 [最終更新日:2008年05月09日]

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