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1970年代以降、30種類以上の新興・再興感染症(1)(SARS、エイズ、エボラ出血熱、狂牛病などの新興感染症や結核、マラリアなどの再興感染症)が人類を脅かして おり、グローバルサーベイランス (地球規模の疾病情報の収集・分析)の重要性が高まっており、既にWHO、米国疾病予防センター(CDC)、フランス、イギリス等でもそのシステム構築に着手しています。

世界のサーベイランスネットワーク状況

右図に示すとおり、WHOやアメリカ疾病予防センター(CDC)、各国の研究機関、NGO等がサーベイランスネットワークを構築している。感染症サーベイランス(2)には、(1)患者発生、(2)発生報告、(3)調査、(4)検体採取、(5)実験室判断、(6)具体的な対策実施の流れがあります。WHOのサーベイランスシステムは、もっとも組織的かつ網羅的ですが、このシステムは各国の公的報告に基づくサーベイランスシステムであるため、その有効性は参加政府機関の提供する情報の速度と信憑性に大いに影響されます。また、インターネットを主体としたネットワーク(ProMEDやGPHIN(3)など)も構築されており、情報の迅速性等に優れています。しかし、インターネットの普及が先進国に偏っている現状から、情報も偏りがちになります。また、開発途上国においては、発生情報伝達のスピードや情報そのものの信頼性が必ずしも高くありません。このように、既存のサーベイランスシステムは強化すべき点が多く、WHOがリーダーシップのもと、これらのシステムのギャップを埋めることを目的に、各々のネットワークをコーディネートするネットワーク(GOARN=Global Outbreak Alert and Response Network)作りを行っています。

Alumni for Global Surveillance network

ACIHでは、このような背景の中、 世界規模サーベイランスを補完する1つの方法として、パーソナルコンタクトを基本としたセンチネル(定点)方式のサーベイランスシステムAGSnetの構築研究を行っています。

SARS流行状況(2002年11月〜2003年6月27日)SARS流行で感染症サーベイランスの重要性が浮き彫りとな りました。国の主権が弱まり、サーベイランスの感度を維持することが困難になっており、ACIHが立ち上げたAGSnetのような補足的システムの参加が不可欠です。今後、センチネルとの共同研究を主に事業展開することで、日本及び世界への貢献度を増すことを目指します。

センチネルの設置方法としては、国立熊本病院臨床研究部やACIHで実施しているJICA集団研修コースに研修員として受けれた専門家とのコネクションを活用することとし、これらの専門家に研修期間中、または帰国後に研究について説明、協力を依頼しています。現在、アフリカ、アジア、中南米、中東地域の29ヶ国61のセンチネルが協力関係にあります(分布図)。

1998年4月からのシステムを試験的に運営、感染症情報の収集を始めました。本システムは、情報定点とのパーソナルな関係を基本とし、情報の量より質に重点を置いたシステムを目指しており、特殊感染症としては、インフルエンザ、コレラ、マラリア、デング熱、その他疫学的、社会的に重大な結果をもたらす感染症としています。 またSARSの世界的流行に対応するため肺炎による死亡についての報告も開始しました。

センチネルは3カテゴリーに分けられ、カテゴリー1が感染症病棟の患者状況、カテゴリー2が病院の臨床検査ラボラトリーの病原菌の分離状況、カテゴリー3が血液銀行のドナーからの採血の際のスクリーニングの状況を定期的に報告しています。これらの報告は、定点及び国内外の研究協力者に配布しています。

研究として以下のような作業を行っています。


(1) 新興・再興感染症(emerging and re-emerging diseases)
WHOによれば、「新興感染症」とは新しく認識されたか、またはそれ以前には一般に知られなかった感染症を指す。その代表的なものはHIV感染症である。
「再興感染症」とは既に知られた感染症で、制圧できたと考えられていたが、環境、起因菌、宿主の変化で再び大きな流行の形をとって出現し始めた感染症を言う。MRSAなどの薬剤耐性菌、マラリア、コレラ、結核などが世界的に問題となっている。
これらの疾病の発現要因としては、
環境 - 人口増加、都市化、人々や物の移動が頻繁になったことにより、感染症の伝播が容易となった。たとえば、デング熱、コレラ、黄熱病などのように一部の地域に限られていた感染症が全世界に広がった。その他、気候の変化で鼠などの動物宿主が増え、ハンタウイルスが流行したことがある。
起因菌の変化 - 抗生剤の乱用による耐性菌の発現(MRSAなど)、たとえば、マラリア原虫の薬剤耐性やマラリア媒介蚊のDDT耐性が発生した。
宿主、ヒトの変化 - 放射線治療、免疫抑制療法など医療技術による免疫機能の低下、HIV感染による免疫低下などにより、従来、その病原性があまり問題とならなくなっていた感染症にも重症化になりうる。カンジダ症、結核などが挙げられる。
(2) サーベイランス(surveillance)
感染症サーベイランスは、感染症対策の樹立に結びつくような疾病情報を把握するシステムを意味し、システムは報告者と報告管理者とのネットワークからなり、刻々と変化する疾病の動向または予期しなかった動向の変化に対応できることが求められる。そのため、報告者と報告管理者は、情報報告→その分析→フィードバック→必要な情報システムの改善、というサイクルを繰り返しながら、より効率の良いネットワークを構築することが必要となる。サーベイランスは効果的な疾病制圧対策の基本となる。
ACIH理事長、蟻田 功はこのようなサーベイランスシステムがなぜ必要かについて次のように述べている。「中国の孫子の兵法に『敵を知り、己を知れば百戦を危うからず』とあり、サーベイランスはこの敵を知る為の最良の方法 です。AIDSは世界のどこに一番流行しているのか、日本に輸入される危険はどの程度か、日本でも大流行の兆しはあるのか、 世界規模のサーベイランスを実施することにより、私達はAIDSという敵を知り、その敵に対する効果的な対策をとる事が出来る のです。天然痘が世界から根絶されたのも、ポリオ(小児麻痺)が中国を含めて東アジアから根絶されたのも、このサーベイランス に力を入れ、敵の集まっている地域に集中攻撃した結果です。」
(3) ProMED、GPHIN
ProMED=世界規模で感染症情報を交換するメーリングリストを用いた情報システム
GPHIN (Global Public Health Intelligence Network)=Health Canadaが世界の感染症発生のニュースをインターネットから収集、提供している。

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 [最終更新日:2004年12月1日]

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